早大・NCNP、AIRECで介護動作を学習 脳の予測処理がフィジカルAIの土台になる可能性

3行解説
- 早大とNCNPが、AIRECのデータで介護動作学習AIを開発しました。
- Scalable PV-RNNは、3万次元超の視覚と身体感覚を直接扱います。
- 体位変換と清拭を、単一のAIモデルで学習できると示しました。
ニュースの概要
2026年8月15日、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)と早稲田大学の研究グループは、ヒューマノイドロボット「AIREC」のデータを用いて、複数の介護動作を単一のAIモデルで学習できることを示した研究成果を発表しました。成果は国際学術誌「Science Advances」に掲載されました。
研究で使ったのは、脳の情報処理理論として知られる予測処理(Predictive Processing)に基づくAIモデル「Scalable PV-RNN」です。これは、次に起こる感覚を先に予測し、実際の感覚との差を小さくする考え方を土台にしています。AIRECは頭部に2台のRGBカメラを持ち、両腕に7自由度とトルクセンサーを備えます。入力には、14関節の角度とトルクからなる28次元の固有受容感覚と、左右カメラの画像から得た32,256次元の視覚情報が使われました。
実験では、人が遠隔操作したAIRECがベッド上のマネキンに対して「体位変換」と「清拭」を行いました。体位変換は仰向けの人を起こす動作で、清拭はタオルで身体を拭く動作です。研究グループは、性質の異なるこの2つの作業を、18回分の遠隔操作データで学習させました。ベッドの高さも590mm、650mm、710mmの3段階で変えています。
学習後は、視覚が見えにくい場面で身体感覚を使って補ったり、見えない対象の状態を内部で推定したりする振る舞いが確認されました。研究者が個別のルールを入れたわけではなく、予測処理に基づく学習の結果として現れた点が特徴です。
脳の考え方をロボットに入れると何が見えるのか
今回の研究で目を引くのは、AIRECのような実機ヒューマノイドから集めた高次元データを、特徴抽出や次元削減なしで扱った点です。普通は、画像やセンサー値をいったん整理してからAIに入れます。今回はその手間を省き、脳の予測処理という共通の考え方でまとめて学習させました。
このやり方は、介護のように動きの種類が多く、相手の状態も毎回変わる仕事と相性がよいです。体位変換と清拭は、見た目も手順もかなり違います。にもかかわらず、ひとつのモデルで学習できたことは、将来のフィジカルAIが「作業ごとに別AIを作る」形から、「ひとつの知能で切り替える」形へ進む可能性を示しています。もっとも、今回はシミュレーション評価が中心で、実機が自律的に介護をこなした段階ではありません。だからこそ、次は実ロボットでの制御につなげられるかが焦点になります。
【解説】AIRECの介護学習が示す、現場実装への距離感
AIRECとScalable PV-RNNの組み合わせは、介護だけでなく、物流や製造のように手順が複数ある現場にも考え方を広げられます。たとえば、同じロボットが「持ち上げる」「支える」「拭く」のような異なる動作を切り替える場面では、作業ごとに別のモデルを用意するより、共通の土台で学ぶ方が運用しやすい場合があります。
ただし、今回の結果は「万能な介護ロボットがすぐ動く」という話ではありません。むしろ、どの工程なら視覚と力の情報をまとめて学ばせやすいかを見極める材料です。現場で考えるなら、まずは動作の種類が限られた小さな範囲から試し、認識と制御のつながりを確かめる進め方が現実的です。
今回の研究は、ヒューマノイドが複数の作業をどう覚えるかを考えるうえで、ひとつの手がかりになります。こうしたフィジカルAIの進化は業界全体で進んでおり、自社の現場でどの工程に応用できるかを見直すきっかけにもなります。
ロボット導入・自動化をご検討の方へ
「自社にはどんなロボットが合うのか」お悩みではありませんか。貴社の現場課題に合わせた最適な活用方法をご提案します。まずはご相談・資料請求からお気軽にどうぞ。
出典: ロボスタ


