協働ロボットと人が同じ空間で作業し、安全センサーの範囲が示されているイラスト
公開日:2026年8月21日
--基礎

協働ロボットの安全規格、ISO 10218とISO/TS 15066をやさしく解説

柵なしで人の隣にロボットを置いて、法的・規格的に問題ないのか。代表的な国際安全規格の概要と実務での押さえどころを解説する。

協働ロボットと人が同じ空間で作業し、安全センサーの範囲が示されているイラスト

※規格は改訂されます。本稿は概要の理解を目的としたもので、実際の導入時は最新版の規格原文と専門家による評価をご確認ください。

柵なしで人の隣にロボットを置いて、本当に法的・規格的に問題ないのだろうか。

協働ロボット導入時に必ず確認すべきなのが、国際安全規格です。今回は、代表的な規格であるISO 10218とISO/TS 15066の概要と、実務での押さえどころを解説します。

1. 規格は「交通ルール」、共存のための共通言語

たとえると

人とロボットの共存は、「メーカーが安全と言っているから大丈夫」では成立しません。交通に道路交通法という共通ルールがあるから車と歩行者が共存できるように、ロボットと人の共存にも国際的な共通ルール、それが安全規格です。

2. ISO 10218、ロボット安全の基本法

ISO 10218は、産業用ロボットの安全に関する基本規格で、2部構成です。第1部(ISO 10218-1)はロボット本体の安全要求で、メーカーが機体を設計する際に満たすべき事項を定めます。第2部(ISO 10218-2)はロボットシステムと導入の安全要求で、ロボットを実際の現場に組み込む側(SIer・導入企業)が満たすべき事項を定めます。

つまり、安全なロボットを買うだけでは半分で、現場への組み込み方(第2部)まで含めて初めて安全が完成する構造になっています。ここが実務上、最も誤解されやすいポイントです。

3. ISO/TS 15066、協働運転の詳細ガイド

ISO/TS 15066は、協働ロボット特有の「人とロボットが同じ空間で働く」場面の詳細を定めた技術仕様書です。核心は、協働を成立させる4つの方式の具体化にあります。

方式内容
①安全適合監視停止人が協働空間に入るとロボットが停止し、出ると再開する方式
②ハンドガイド人がロボットを直接手で導いて操作する方式
③速度・間隔監視人との距離をセンサーで監視し、近づくほど減速・停止する方式
④動力・力制限万一接触しても危害が生じない水準に力を制限する方式。身体の部位ごとの許容力・圧力の目安が数値で定義されている

③は教習所の「かもしれない運転」の規格化ともいえます。④は「痛くない接触とは何か」を数値で定義した点が画期的でした。なお、ISO 10218は近年改訂が行われ、TS 15066の内容を本体規格へ統合する方向で整理が進んでいます。導入時は、どの版が適用されるか最新状況をご確認ください。

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4. 実務での安全評価、確認したい4ステップ

1
リスクアセスメント
現場・作業・ワーク固有の危険源を洗い出す
2
方式の選択
4方式のどれで安全を成立させるか決める
3
検証
設定した速度・力の制限を測定・確認する
4
文書化と教育
評価結果を記録し、運用ルールを教育する

重要なのは、リスクアセスメントの主体は導入企業側にもあるということです。ベンダー任せにせず、自社の現場の危険を一緒に洗い出す姿勢が、規格の求める安全文化そのものです。

5. ヒューマノイドへの示唆

移動しながら人と共存するヒューマノイドは、協働ロボットの安全思想をさらに発展させた領域であり、関連する規格・ガイドラインの整備が国際的に進行中です。現時点の導入では、既存の協働安全の考え方(リスクアセスメント、速度・間隔監視、多重の備え)を土台に、個別の安全設計を行うのが実務です。機体そのものの安全設計の考え方はロボットの安全設計もあわせてご覧ください。

規格対応で見落とされがちな論点

  • 「協働ロボット」というカテゴリだけでは安全は保証されない
    製品カテゴリの表記があっても、実際の設置環境やワークの組み合わせ次第でリスクの水準は変わります
  • 複数台・複数機種混在時の評価は個別
    単体では適合していても、複数のロボットが近接して稼働する場合は、組み合わせでの再評価が必要になることがあります
  • 規格改訂への追従
    導入時点で適合していても、規格改訂後に再評価が求められる場合があるため、長期運用を前提に情報を追い続ける体制が望まれます

よくある質問

Q. 協働ロボットを導入すれば、リスクアセスメントは不要ですか。

不要ではありません。機体自体が規格に適合していても、扱うワークや作業内容によっては追加の安全対策が必要になる場合があります。

Q. ヒューマノイドにもISO 10218は適用されますか。

産業用ロボットとしての基本的な考え方は参考になりますが、移動しながら人と共存する特性を踏まえた個別の安全設計が実務上は必要です。

Q. リスクアセスメントは誰が実施すればよいですか。

導入企業側にも主体があります。ベンダーと共同で現場固有の危険源を洗い出すことをおすすめします。当社でも実施支援を行っています。

まとめ

安全規格は導入のハードルではなく、「ここまでやれば共存してよい」と示してくれる道しるべです。GA Roboticsでは、リスクアセスメントの実施支援から、規格を踏まえた安全設計、運用ルールの整備までご支援しています。安全面のご不安こそ、最初にご相談ください。

安全面のご不安こそ、最初にご相談ください

リスクアセスメントの実施支援から、規格を踏まえた安全設計、運用ルールの整備までご支援します。